大手企業も導入開始、ケニアの求職事情を変えたハッシュタグ『#IkoKaziKE』

筆者:RAHAB GAKURU

翻訳:長谷川 将士

日本と同じようにケニアでも多くの親は子供が勉強し、良い成績を取り、良い会社に入ること期待している。しかし、新卒採用制度が無いケニアでは卒業した学生が就職できるのは極一握りだけで、卒業後の就職活動も熾烈さが増している。今は大分マシになったという声はあるものの、依然として血縁や同じ民族の求職者を優先したり、能力や経験ではなくコネが就職に直結する現状に頭を悩ませる若者は数多くいる。毎年大量の求職者が労働市場に流れ込む一方で求人は限られている中、仕事を得られずインフォーマルセクターで自営業を営んだり、中には働くことそのものを諦めてしまう者も少なくない。

デジタルマーケターであるローズ・ムヌヘ氏は銀行を2016年に辞めてから、再就職先を見つけるために家族や友人に求人があるか聞きまわっていた。

「そのとき初めて多くのケニア人が私と同じ問題を抱えていることに気づきました。(雇用が限られているケニアでは)とても親しい人間以外には求人情報をシェアしたり公開しないのです。そして、個人店での求人、企業がソーシャルメディアで公開する求人、そして新聞や求人サイトで公開されている求人など実際には様々な職種の需要があるにも関わらずバラバラに公開されているため、中々求職者と企業のマッチングが上手くいっていないことが分かりました」

イベントで発言をするローズ・ムヌヘ氏。現在は講演や個人サイトを通じてケニアの雇用問題について積極的に情報発信を行っている。

ムヌヘ氏はかき集めた求人情報をWhatsAppを中心にSNSで公開してみることにした。例えば看護師の仕事に求人があることが分かっても、彼女の周りに看護師ができる友人や親戚が見つからず、せっかくの求人情報が無駄になってしまうことがあったためだ。

「求人を見つけても、自分がその職種に合わなければ見送ってしまう人は沢山いるのではないのでしょうか。確かにそれは貴方の仕事ではないかもしれません。しかし、誰かの仕事にはなるかもしれません。だからこそ、オンラインでこうした求人情報を繋ぐことが出来ればと考えました」

自分が職探しで困っていたことはもしかしたら多くのケニア人が困っていることかもしれない。この小さな発見から始まったのが#IkoKaziKEというTwitter上のハッシュタグだ。このハッシュタグを検索することでこれまで各企業や新聞、求人サイトといったバラバラの情報源を一括にまとめて確認することができ、誰でも無料で手軽に情報にアクセスすることが可能になった。

Twitter上の#IkoKaziKEハッシュタグ。タグに参加しているものがお互い情報発信を行い、求職マッチングを助け合っている。

#IkoKaziKE上で公開されている求人情報は実に多彩で、キオスク(ケニアの個人商店)の店番から最新アプリのデベロッパーまでありとあらゆる求人が含まれている。また、サファリコムやケニア商業銀行(KCB)、ナイロビ病院からブリタム、各国政府系機関から海外大手NGOといった自らのホームページを持っている有名企業・機関の求人情報も公開されており、同ハッシュタグに寄せられている関心と期待は日増しに大きくなり続けている。

「これがアフリカあるいはどこの文化でも同じかどうかは分かりませんが、ケニアでは職を持っていない人は社会の中でまるで落伍者の様にみなされ、それを恥だと思ってしまいます。このハッシュタグ上で職を得られた人の喜びの声が聴けるのはたまらなく嬉しいですね」

#IkoKaziKEで職を見つけた求職者の喜びの声。

いまや求職者にとって重要な情報インフラとなっている#IkoKaziKEだが、ムヌヘ氏はさらに多くの人に活用されることを望んでいる。特に政治家や地域のリーダーに対して、これほど多くの若者が職を求め、ケニア経済状況の改善を要求していることに目を向けてほしいと願っている。完全な買い手市場であるケニアでは雇用する側が大きなアドバンテージがあり、解雇をちらつかせて低賃金で過労働を強いる場面や、職を得るために金を支払う場合も少なくない。

「これが今のケニアの現状です。私はお金を支払ってまで職を得ることに反対しています。なけなしのお金を渡してまで職を得ることが正しいことだとは思えませんから。このハッシュタグがそうした悪習を解決することに繋がればと思っています」

現在Twitter上では数分毎に求職情報が行き交い、就職活動中のケニア人を支えている。雇用問題が深刻なケニアにおいて#IkoKaziKEが果たしている役割は非常に大きい。一つのハッシュタグから始まった試みがこの先どれだけのケニア人を救うのか、これからも注目していきたい。