日本の医療がナイロビで受けられる!Forest Japanの挑戦と想いとは

筆者:長谷川 将士

近年ケニアでは日本人居住者の数が増えており、現在ではおよそ750人程度が現地で居住している。新たにケニアに来た日本人にとって異国の生活は文化の違いや生活面で苦労や不安に悩まされることも少なくなく、特に医療面では高額な診療費やアバウトな対応に困惑する場面も多く、常に不安がつきまとっている。こうした中で一昨年から活動を始めているのが、日本の医療法人が設立したフォレストジャパンだ。海外から中古の医療器具を利用する病院も多い中、同病院は多額の資金を費やし最新の設備を導入し、常駐する日本人医療スタッフがケニア人スタッフと共に「日本型医療』の実践を行っている。なぜ日本の医療法人が遠くケニアで病院を作ったのか?フォレストジャパンの挑戦と想いに迫った。

ナイロビで実践される「日本型医療」

ナイロビのホスピタルロードに面するForest Japan Diagnostics Centre(以下、フォレストジャパンと表記)は、大分県にある医療法人『光心会』が現地法人として設立した病院だ。フォレストジャパンでは島津製作所やシーメンス社製の最新機材が揃えられ、日本人スタッフが3名常駐しており、日本語対応での診療が可能となっている。ケニア人医師と共に「世界で一番」とも言われる日本型のきめ細かい診療を実践しており、その水準の高さからケニア人医師が研修に来るなど、現地での医療改善に大きく貢献している。

フォレストジャパンで担当できる分野は産婦人科を除き、外科から内科までほぼ全ての分野の診療が可能だ。産婦人科についても同病院がある建物には産婦人科専門のクリニックがあり、最近ではフォレストジャパンで超音波検査を行い、そのデータを基にクリニックで診療を行うという日本人患者もいる。また、中古CTがよく故障するという病院からはCT診療を依頼されるなど、まるで駆け込み寺のようにフォレストジャパンを頼りにしている病院や患者も少なくない。レントゲンやCT等のデータは光心会が地元で運営している諏訪の杜病院に送られ、日本人医師の診断をケニアで受け取ることができる点も心強い。フォレストジャパンの活動は多岐に渡り、人間ドックからスラムの巡回診療、アフリカスキャン社が住民に対する健康調査を実施した際には血液検査を行うなど、活動の幅を広げている。

病院にあるシーメンス社製のCT。フォレストジャパンの設備はすべて新品で、中古品は使われていない。

「医療はお金じゃない」

ケニアで重要な役割を担っているフォレストジャパンだが、億単位で金がかかる最新設備をケニアに投入し、法人を設立するというリスクはどう捉えられているのだろうか。当時ケニア進出を決定した武居光雄院長に疑問をぶつけたところ、「根本的に、医療はお金じゃない」という言葉が返ってきた。

武居氏がケニアに来たのは2002年のことだった。ケニアの医療の現場を歩き、そこで目の当たりにしたのはとんでもない光景だったという。

「日本なら死なないような人たちがたくさん死んでいる現状を目の当たりにしました。それで何かできないかと保健省と相談していくうちに、スラムの巡回診療を行うことになりました。ただ、月に一回だけの診療だと、単発で終わってしまう、たかがしれているんですよ。それを3、4年やっていくうちに、やはり拠点がないと駄目だと思うようになって、この病院を始めることにしたんですね」

武居氏が医師になりたての頃、国境無き医師団に参加したいという思いがあったという。しかし、紛争国に赴き短期間のミッションをこなすよりも、ある拠点で長期間にわたって医療改善に取り組むのが自分のやり方にあっていると思った。そのスタンスは長年変わることなく、ケニアで病院設立という形として結実した。しかし、ケニアで法人、それも医療法人を設立するためには多くの課題と戦う必要がある。進まない役所手続き、見慣れない日本人という立ち位置、法人設立までには数年を要した。

「それでもね、会って話せば、これをやると決めて行動し続ければ、助けてくれる人がいっぱい現れてくれるんですよ。それは日本人もケニア人も同じです」

診療中の武井院長。ケニアには定期的に出張と巡回診察に来ている。

なぜケニアに最新設備を導入?

武居氏の変わらない意志が病院設立を実現させた。しかし、なぜケニアで最新の医療設備を持ち込んだのか。武居氏は次のように説明する。

「確かに中古の設備を使う病院はこちらにたくさんあります。ただ、僕が設備を導入するにあたって一番に考えたことは現地でメンテナンスができるか、パーツの交換ができるかです。基本的にはケニアでもメンテナンス可能な信頼している日本医療メーカーの器具から選び、そうでない場合は海外メーカーのものを導入しました。中古医療設備ではメンテナンスが行えない場合があり、診断の精度に大きく影響してきます」

信頼できる良い設備を使えば、一発で診断が確定できることも多々あるという。中古品ではそれが難しく、診断にも不安が残る。高度な医療を実現するためには、最新設備を導入し、メンテナンスを行える環境を作ることの方が理にかなっており、医師としてのこだわりがそう決めさせた。

「病院が軌道に乗るには10年、最低でも3年は必要です。しかも、ケニアはタイムパンが違うから、地道にやっていく必要があります」

病院経営者と医師という二つの肩書きがありながら、武居氏は一貫して医師としての立場を貫いている。今回の投資額について聞いてみても「まあ、お金のことはいいじゃないですか」と朗らかに笑った後、こっそりと数億円単位であることを明かしてくれた。企業であれば工場が一つ建てられる金額である。医師として、腰を据えてケニア医療に向き合う覚悟はすでにできている。

フォレストジャパンの挑戦が持つ価値

医師として自らの信念を貫く武居氏であるが、現在でもスラムでの精力的に巡回診療を続けており、病院のスタッフからは「あんまりスラムばかり歩いて大丈夫か」と心配されるほどである。他の病院とも積極的に交流し、ケニア医療の現場を熟知しているが、現状については次のように考えている。

「ケニア人医師も悩んでいますね。欧米に比べれば医療水準は低い、機材も少ない、本当はもっともっとやりたいという方と会うことは多いですね。みんなそう思っていると思います。勉強したいケニア人医師も多い。しかし、奨学金の制約や資金不足でなかなかそれができないということも多い。困難はありつつも、モチベーションが高いケニア人も多いですよ」

ケニアにはアガカン病院やナイロビ病院などの高級病院があるが、それらの病院と比較した際にもフォレストジャパンの存在意義は際立っている。

「アガカン病院やナイロビ病院と比べても、うちの方が細かく丁寧な診療ができますね。うちの何倍のお金をとっているけども、診療がアバウトです。料金設定については、調べられるだけ調べて、それよりも安くしました。中々料金を教えてくれない病院が多かったんですが、知り合いからの情報を集めました。」

元々はケニア人に幅広く診療できるために設立された病院なため、診察料は同じ医療水準の病院よりも低く設定されている。そのため最近は高所得者層だけはなく、中間層の利用者も増えてきているという。また、リピーターの患者が口コミでフォレストジャパンの評判を広め、徐々に認知されてきていると実感している。

最後に武井院長になぜ医師としてこのような挑戦を続けているのかについて質問をした。

「要するにね、僕は医者が好きだから。僕が頑張れば患者さんが助かるじゃないですか。不思議とね、一生懸命頑張って信頼があれば、たとえ患者さんが助からない場合でも家族の方は喜んでくれるんですよ。それはつくづく思います。結果が駄目でもそれは分かってくれるんですよ。医師として医療を提供することに専念するだけです」

フォレストジャパンはケニアに住んでいる日本人の間で、未だ認知度が高いとはいえない。しかし、近い将来ケニアの病院選びのファーストチョイスになる日もくるだろう。アフリカで初となる大型日本医療法人の挑戦を支えているものは、医師として得られる素朴な喜びと力強い信念なのかもしれない。

以下はフォレストジャパンのウェブサイトURLになります。診察を考えられている方はご参照ください。病院に電話をすれば、日本人スタッフに対応していただけます。

http://grandforest.jp/dx/