実用化に前進、太陽光で新たなイノベーション調理器具を開発

世界的な人口増によりエネルギー需要が急増している中、天然資源から再生利用可能エネルギーへ移行する必要性が指摘され続けている。特に人口増が顕著なアフリカでは薪(たきぎ)や木炭需要が増えており、森林破壊といった環境リスク、室内で二酸化炭素等の有害物質が発生することによる健康リスクが問題となっている。こうした中、ケニアのカクマ難民キャンプでは太陽光エネルギーを調理や暖房に使用する熱エネルギーに変換するという画期的な挑戦が続けられている。

太陽光調理器具は次世代の解決策となるか

国連機関の一つ、世界食糧計画(WFP)のエンジニアとして勤務しているゴドウェイ・マウィラ氏はエネルギー関連の研究者であり、再生可能エネルギーを普及するため設立されたエコマンデート社の共同創設者でもある。

ケニア有数の難民キャンプであるカクマではカクマでは紛争により南スーダン、スーダン、コンゴ民主共和国などから来た難民約19万人が居住しているが、薪(たきぎ)の伐採による森林破壊が大きな問題となっている。人口増に伴い調理に使用されるエネルギー需要が急増したため代替エネルギーの実用化が急務であったが、マウィラ氏はこうした背景からサンバケットが開発の実用化に着手したと説明する。

サンバケットは持ち運び可能な調理用ストーブで、太陽光を集積することで高い熱エネルギーが利用可能となり、調理以外の用途でも使用できる。元々は米国イリノイ大学の学生チームが開発した製品だったが、その後研究者達によりこのアイデアが引き継がれ、現在マウィラ氏たちが開発、改良を行っているサンバケットの原型に繋がっている。

サンバケットのデモンストレーションを行うマウィラ氏。中央のくぼみに調理用器具をはめ込み、蓄熱する。

サンバケットがユニークな点はソーラー発電の様に電気エネルギーに変換することなく、太陽光エネルギーをそのまま熱エネルギーとして使う点だ。現在マウィラ氏率いるエコマンデート社はイリノイ大学の研究者達と提携し、サンバケットの実用化と普及を進めている。同社の共同創設者であるブルース・エリオット氏によれば、『エネルギーの貧困化』により薪や木炭など簡単に使用できる可燃性エネルギーを使用せざるを得ない状況が増え、二酸化炭素等の有害な排出物や環境破壊が懸念されている。しかし、太陽光は無料で安全な再生可能エネルギーとして期待されており、テクノロジーの発達によりいつでもどこでも(例えば夜間に屋内でも)使用できるエネルギーとして活用できる余地があるとする。また、食べ物を乾燥させたり、暖房、(煮沸による)安全な水の入手にも繋がるといった広範な用途があるため、人々の生活水準を向上させることに大きく貢献できるという。

サンバケットの構造とネックになる高コスト

サンバケットは太陽光を一点に集めるパラボラ型の受け皿と、その中心に熱を貯める調理用器具から成り立ち、最大で摂氏400度にまで達する。十分に熱が貯まった調理用器具はその後取り外して地面に置き、その上にフライパンや鍋を置いて調理が可能になる。マウィラ氏によれば一度熱を貯めた後は最大6時間利用が可能で、蓄熱をしながらだと16時間まで使用できる。サンバケットはアフリカの難民キャンプを中心にパイロット事業が進んでおり、実用化が待たれている。ブルース氏によれば現在、試作品が導入された段階で、実用化には高額な製造コストを下げる必要があるという。

カクマ難民キャンプでサンバケットを試験している様子©Eco-mandate ltd

ブルース氏は同社が描くプランを次のように説明する。

「今は次世代型サンバケットの開発に着手しています。製造コストを下げることを目的としており、最終的にはマーケットで簡単に手に入る値段にしたい。また、『ソーラーファーム』構想という、サンバケットを購入した人が木炭の値段より安く調理や暖房のため使用者に貸し与えるという構想も練っており、生活の中で利用される場面が増えるのではないかと期待しています」

サンバケットを使用した実際の調理風景。実用化が成功すればこうしたシーンがケニアで増えるかもしれない©Eco-mandate ltd

現在はサンバケットを一つ作るのに500ドルという高額なコストがネックとなっている。マウィラ氏は大量生産を行うことで商業レベルで通用する200ドルまで下げる計画を進めている。

サンバケットの欠点は曇りの日には使用ができず、天候によって利便性が大きく変わることだ。ケニアの場合では乾季には問題なく使用できる一方、雨季になるとほとんど毎日使用できなくなる可能性が高い。しかし、ケニア北東部や沿岸地域といった比較的晴れの日が続いたり、乾燥している地域での利用をブルース氏は期待しているという。

「カクマでのパイロット事業も乾燥地域だから選ばれたものです。しかし、今後技術の発達により長時間の蓄熱を可能にすることで、曇りの日や雨季でも便利に利用できる器具に進化させられると考えています」

サンバケットプロジェクトは低中所得国におけるイノベーションを目的として、カナダ政府のサポートを受けた基金『グランドチャレンジカナダ』から25万ドルの助成金を受けている。この基金は試験開発と普及を目的に24ヵ月間継続的に支援を受けられる。

現在進行形で進むエネルギー問題に画期的な解決策を提示できるか。マウィラ氏達の挑戦が成功すればケニアの調理風景が一変する可能性すらあるかもしれない。太陽光を活用する試みは今も続いている。

筆者:Lilian Wangari

翻訳:長谷川 将士