ウガリにチャパティにスープに、野菜粉末は市場で評価されるか

マーク・トウェイン曰く、「人生において成功を掴むために必要なことの一つは、食べたいものを食べ、食べたものから活力を得ることだ」という。日本にお米があるように、ケニアで元気の出る食べ物といえば誰もがウガリ(トウモロコシの粉を熱を加えて練りあげたもの)と答えるだろう。ケニアではどの家庭でも一日に一度はウガリが食べられているといっても過言ではない。

プレミア大学(バングラデシュ)の研究者が2014年に行った調査では、調査対象となったケニアの家庭では日常的に摂取する栄養の36%はウガリから採られているという。調査レポートではケニア人が如何にウガリを食べているかが示された一方、ウガリに偏った食生活のため栄養失調になるリスクが指摘されている。今年発表されたケニア健康省のレポートでは177社のメイズ粉を調べたところ、鉄分とビタミンAが健康的な生活を送る上で基準値を満たしているものは全体の5%、鉄分と亜鉛の基準値を満たしているものが12%に留まった。この調査結果はケニア人の栄養失調の原因の一つとされ、ウガリに偏った小生活ではそもそも健康に必要な栄養が十分に摂取できない可能性が浮上する結果となった。

野菜の粉末を製造するアベルデア・アグロメア社(Aberdare Agglomere Limited)の代表を務めるジョナサン・ムバティア氏はケニア人の健康問題に危機感を覚える一人だ。同社はカボチャやニンジン粉をメイズ粉や家庭に提供することで、ケニア人の栄養失調を改善させようと取り組んでいる。

同社が提供するカボチャ(左)とニンジン(右)の粉。ウガリやチャパティに混ぜて食べる

「現在ケニアのウガリ粉製造メーカーで必要とされる栄養素を補完する製品を出しているところはほとんどありません。この製品を混ぜ合わせても普通のウガリと変わることなく調理して食べることができますので、多くの方に利用していただくことで栄養改善に貢献できると考えています」

同社は創設者の実家で製造を始めた。地元の農家がせっかく収穫した農作物を廃棄しなければならず、売っても中間業者に安く買いたたかれていた状況を変えるため、農作物に付加価値をつけて現農家のサポートをする目的で事業が始まった。

規模が大きくなる連れて拠点を増やし、今年のナイロビイノベーションウィーク(ケニアを代表するスタートアップイベント)にも参加。また、KCBライオンズデン(ケニア商業銀行が提供する中小企業を対象としたサポートプログラム)に応募し、7百万円の資金を調達することにも成功した。

ムバティア氏によればカボチャは栄養が豊富でチャパティ(小麦粉を練って焼いたもの)やスープ、ケーキやお粥(かゆ)に入れても美味しく食べられるという。また、低カロリーでビタミンやミネラル分を豊富に含んでいるため、不足しがちな栄養分を摂取することができる。

世界保健機関(WHO)のレポートでもカボチャは栄養食品として度々推奨されており、糖尿病や心臓病を予防し、健康な皮膚や毛髪を増やすなどの効果があるとされている。

「私たちの製品は成分の99%が原材料からできています。種や皮も無駄にはしていません。特に子どもをターゲットにしていて、ビタミンA、B、Cは発育を手助けしてくれますし、年配の方にはそれに加え亜鉛を簡単に摂取することができます。所得レベルに関わらず、すべての人が忙しい生活を送りながら必要な栄養を取る必要があります。ケニアでも最近健康志向の方が増えていることもあって、この製品の人気が広まるのではないかと期待しています。健康で長生きな人が増えてくれたら嬉しいですね」

カボチャ粉を加えて作られたチャパティ。通常のものより色合いが強く、食欲をそそる© Aberdare Agglomere Limited

また、同社はニンジン製品を提供することで美容関係の顧客を得ることも計画している。ニンジンはスキンケアに良い成分を含んでおり、髪に潤いをもたらす。将来的にはエッセンシャルオイルの生成等を通じ、食品市場だけではなく多様な他産業への転換も視野に入れている。

現在の卸売価格ではカボチャ粉が1キロ700シリング(約770円)、ニンジン粉が600シリング。店頭価格では950シリングから1000シリングほど。ウガリ粉が2キロで90から130シリングであることを考えれば高額だ。卸売り先は家族経営のスーパーや中小チェーンスーパーを中心に順調に拡大させているものの、同社製品を普及する上で将来的にはコストカットが必要になりそうだ。

健康問題への関心が高まるケニアで、同社の製品は消費者が健康にどれだけお金を支払うかを探る上で一つの目安となるかもしれない。消費者がつける『健康の値段』は如何ほどだろうか。

製品について語る共同創業者のジョナサン・ムバティア氏(右)とジャクソン・ムワニキ氏(左)。

筆者:Lilian Museka

翻訳:長谷川 将士

企業、野菜、健康, 食品

Posted by HasegawaMasashi