匿名AI回答サービスが性教育改革に貢献、テクノロジーは女子を守れるか

教育の中でも性教育ほど論争が起こる分野も珍しいかもしれない。適切な性教育の有無は青少年の将来を左右し、特に妊娠や中絶など直接的な影響を受けやすい若い女子が自らの身を守るためには必要な知識といえる。その反面、伝統的価値観や文化的背景が障害となり、性教育が広まっているとは言えない状況にある国も少なくはない。

ケニアでは2014年に上院議員ジュディス・アチエン氏が、青少年が適切な性教育を受けれられる様にリプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康と権利)関連の法案を提出した。だが、法案は青少年が不健全な行為に走る危険性があるとし、国会はこれを却下した。

翌2015年には保健省が『全国青少年の性および生殖に関する健康政策(ASRHP)』を発行したが、現在でも子供を持つ両親や教会、政治家などから根強い反対を受けている。

子どもの性教育に対する反発と議論は平行線を辿り、子どもの妊娠や危険な中絶、若年齢での結婚、それに伴う学校中退などが相次いでいる状況は手つかずのまま。主に被害を受けているのは言うまでもなく、少女たちだ。

ソフィー・ボット(Sophie Bot)社の創設者でありCEOを務めるアービング・アムカサ氏は警鐘を鳴らしている。

「適切な性教育が存在しないことが問題です。社会の風潮や伝統的価値観ばかりが議論され、結局大人たちは性教育に関する議論を子供たちから取り上げてしまっている状況です。これでは子供たちが必要としている性教育を提供することなどできるはずがありません。子供たちがこの問題に直面した時は大抵恥ずかしがって、目を背けるでしょう。その結果、望まぬ結果が次々と生まれるのです」

ソフィー・ボット社はAI(人工知能)を使用した、性知識に関する自動応答システムを展開している。アーヴィング氏によれば「Siriの性教育バージョンのようなもの」というシステムで、テキストと音声で質問者が必要とする知識に対して適切な回答を提示する。やり取りは匿名で行われるため、子どもが恥ずかしがって口を閉ざす心配はなく、身近に相談できる相手がいない場合には心強いパートナーとなる。

ソフィー・ボット社創設者のアーヴィング氏(左)と共同開発者(右)。

「元々18歳から24歳の青少年を対象にしていました。しかし、その後全年齢層から様々な質問が投稿されたことをきっかけに対象を広げました。今では誰でも、どんな年齢の方でも利用可能です」

ソフィー・ボットを開発したきっかけは、アーヴィング氏の親戚二人がエイズで亡くなったことだった。訃報を受けてすぐに開発を始めたアーヴィング氏は身近にいた、間違った性知識から人生を持ち崩してしまった女性の名前から、このシステムをソフィーと名付けた。

ソフィー・ボットを使うには様々な方法があり、携帯アプリに加えメッセンジャーやSMS、ツイッターやフェイスブックなど使用者が使いやすい媒体から情報にアクセスできる。質問は短時間の内に返信され、短ければ数秒で回答を得ることができる。利用者は世界165ヵ国からソフィーにアクセスしており、その内ケニア人ユーザーは66%に昇る。

このサービスは2016年に開始し、現在は毎週1000個程度の質問が投稿されている。しかし、利用者が増加したことで回答速度と精度が低下し始めており、毎週300個程度の質問が回答不可となっている。アーヴィング氏は現在もシステムの改良に取り組んでおり、ソフィーの進化により問題は解決されるだろうとしながらも、利用者の期待に応えきれていない現状を歯がゆく思うと吐露(とろ)する。

ソフィーの開発・運営資金には国連人口基金から一万ドルの投資を受けたことをきっかけに、エクイティ銀行から4万ドル、その他様々なスタートアップ向けプログラムから資金調達を行ってきた。

実際のソフィーの回答事例。©Sophie Bot

「現在ソフィーからは一円も発生していません。今も弊社はシード資金に頼っていますが、二年後には提携の提案をされているマイクロソフトとパートナーを組み、関係機関のコンサルタントサービスを展開していくことを目指しています」 大人の議論から子どもがアクセスできる性教育へと移行できるか。同社のサービス改善が実れば、より多くの少年少女が望まぬ結果を回避することができるだろう。ソフィーが世界中の子ども達に対して心強い相談相手となる未来 を待ちたい。

筆者: Lilian Museka

翻訳: 長谷川 将士

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Posted by HasegawaMasashi