水に立ち向かい続けた女性の話

ナイロビの東部にあるキツイ州で生まれたルース・ムワンズィアは『水』の問題に直面していた。乾燥地域の同州では頻繁に水不足に悩まされ、人口の拡大と共に深刻さは増していった。幼いころから水の問題を目の当たりにしてきた自分に何ができるか。大学を卒業した彼女は飲料水を取り扱う会社でインターンをすることにした。

インターン先では水に関するありとあらゆる知識を得ることができた。水質調査、ろ過製法、生きる上で必要不可欠な水という『産業』にみるみる引き込まれていった。

「私もキツイのため、水会社を作ることはできないだろうか」

唐突なアイディアだった。しかし、立ち止まる気はなかった。先ずは父親に話をしてみることにした。とりとめのない不明瞭な思い付きをぶつけたが、そもそも取水許可や安全保証を得られるあてすらない。父親は彼女の熱意を受け止め、先ずは安全に水をろ過することから始め、その後一つ一つ許認可を得てはどうかと助言した。彼女はさっそく会社を設立し、従業員を一人雇った。最初の従業員は彼女の妹だった。

彼女が設立した会社、クーラウォーター社は2014年に操業を開始し、紆余曲折ありつつも二本の取水口を得た。しかし、新参者にマーケットは甘くなく、彼女が提供する水が人々の口に運ばれることは無かった。事業が上手くいかない中、従業員に金を持ち逃げされたこともあった。サンプルを持ち、足を棒にして一件一件店を回る日々が続く。「水不足を解決したい」という情熱を支えに、重い足を引きずった。

彼女の熱意と水の品質が次第に信頼を得るようになり、少しずつ顧客が増え始めた。一度回り始めれば水ビジネスは想定以上に利益を上げるようになり、現在では個人商店、レストラン、教会、企業へボトリングした水の卸売り販売を行っており、9都市に製品を供給している。現在彼女の会社は15人の従業員を抱えるまで成長したが、若者の失業問題に少しでも貢献できていることに誇りを感じている。

水に向き合い、水に立ち向かった少女はいつしかケニアの億万長者、注目の若手起業家ルース・ムワンズィアとして注目を浴びるようになっていた。無謀とも思える挑戦を始めた彼女は、ケニアのみならずアフリカの水問題を解決することを夢見ている。

「私がこの事業を始めたきっかけは生まれ育ったコミュニティで水不足の問題に触れ続けたからでした。この事業をケニアのみならず、アフリカ全体に広げたい。10年、15年、何年かかるかは分かりません。しかし、この問題に取り組み続けることはできます。それが私の夢です」

ボトリングに従事するクーラ・ウォーター社の従業員。同工場にて。

筆者:Monicah Nairesiae、長谷川 将士

ノンフィクション

Posted by HasegawaMasashi