eコマース戦国時代の生き残り方、『メイドバイケニア』のプラットフォームが見せる地域密着型戦略

自宅に居ながら手軽に商品を購入できるeコマース、つまりオンラインショッピングが 世界中で急速に 広まっている。ケニアでもこのトレンドは広まりつつあり、サービスを手掛けるeコマース企業が市場でしのぎを削っている。

国連貿易会議(UNCTAD)が昨年リリースしたレポートによれば、アフリカでケニアは南アフリカ、ナイジェリアと同じくeコマース大国とされている。2017年にはオンラインショッピングを利用するユーザーは261万人と推計されており、南アフリカの293万人に迫る勢いをみせている。また、ケニアでは各社が激しいシェア争いを行っており、言わずと知れたアフリカ最大のeコマース企業ジュミア(Jumia)をはじめ、中国人オーナーが指揮をとるキリモール(Kilimall)、サファリコムが全面サポートをするマソコ(Masoko)等、群雄割拠の戦国時代という様相をみせている。

しかし、ケニアのみならずアフリカのeコマース事業は大きな課題に直面している。先日ニューヨーク証券上場で大きな注目を集めたジュミアが公表した登録届出書からはアフリカでの苦闘ぶりが伝わってくる。流通サービスの質の低さとコスト、高頻度で顧客が商品を受け取らないといった隠れたコストが表面化し、高い管理費が収益化を妨げている。2018年度の損失(調整後EBITDA)が1億5千万ユーロを超えており、設立後継続して上昇している。また、昨年キリモールは進出先のウガンダから撤退し、eコマースを巡る大きな期待と課題の双方が話題となっている。

メイドインケニア、メイドバイケニアのeコマース

逆境ともいえる状況の中、オラコムケニア・ウェブソリューション(Oracom Kenya Web Solutions)社の創設者であるアルフォンス・ジュマ氏はeコマースにかける思いを熱く語る。

「eコマースに関連する様々な課題がお客様をオンラインショッピングから遠ざけているのです。だからこそケニアで技術革命を起こして利益を最大化できるようにし、適切なアプロ―チを模索する必要があります」

ジュマ氏の原点は幼い頃、路上で物売りをしていた時に出会った数々の人々だった。

「オレンジ売りをしていた少年の頃、わざわざ長い距離を歩いて買いに来る多くのお客様を見てきました。モイ大学で情報工学を学んだ後、自分が培(つちか)ってきたWEBデザインの技術で、子どもの頃に見たお客様を助けることが出来るんじゃないかと思ったんですね。誰でも簡単にアクセスできるオンラインプラットフォームを作りたい、これがマイビッグオーダーの始まりでした」

同社が展開するであるマイビッグオーダーはしばしば、『ケニアで初めてケニア人の手で作られたeコマース事業』といわれる。同社が提供する販売システム、アプリシステムはジュマ氏自らの手によって作り上げられ、着々と利用者を伸ばし続けている。同社の従業員は25人、日勤と夜勤の担当制を敷いており、昨年ケニア版マネーの虎、KCBライオンズデンというテレビ番組で見事1000万シリングの出資を勝ち取って以降、事業は拡大路線に入っている。

同社のプラットフォームを説明するジュマ氏(右)

売り手にフォーカスしたプラットフォーム

マイビッグオーダーの受発注システムは他のeコマース企業とあまり変わりない。買い手がアプリにログインして注文を完了させると、売り手側のお店と運び手であるドライバーに同時に通知が来る。GPSから正確な距離を割り出し、後は売り手から買い手へとドライバーが運ぶだけだ。

マイビッグオーダーの特徴は主にナイロビ市内にある実店舗と顧客を結び、地域密着型の販売モデルを実践している点で、現在1000以上の契約店、2万点を超える商品を取り扱っている。ジュマ氏の狙いはマイビッグオーダーを通じて商品だけではなく、商品を売る店舗そのものPRをすることで顧客の信頼を得ることだ。未だ多くの顧客がオンラインショッピングに不安を抱える現状、このモデルを採用することで顧客は安心して商品を注文できるだけでなく、ジュミアのような自前の大型倉庫などにかかる管理費を削減している点は注目すべきだろう。

マイビッグオーダーのWEBサイト。販売店舗が明記されていることが特徴。©myBIGOrder

商品輸送は個人の輸送屋が請け負うことになるが、盗難等のトラブルに関しては保険会社の保証を活用することでリスクを抑え、eコマース事業における『隠れたコスト』を低減させている。

マイビッグオーダーを利用するにあたって、店舗側はコミッションモデルとメンバーシップモデルのどちらかを選ぶことが出来る。コミッションモデルは同プラットフォーム上で販売した商品の10%を手数料として支払うが、メンバーシップモデルでは1000シリング(約1100円)から50,000シリングの会員費を支払うシステム。さらに会員にはデジタルマーケティングやオンラインでの販売促進のサポートといったサービスも含まれており、これまでeコマースに馴染みのなかった店舗と積極的に協力体制を築き上げている。

また、マイビッグオーダーはポイント制を導入しており、一つの商品を購入するごとに5ポイントが得られ、これは5シリングとして使用可能だ。これら販売努力も実を結んでおり、一日に最低100回以上の受発注を行っており、eコマース事業としては珍しく既に黒字化を達成している。規模の違いはあるものの、未だ巨額の経常赤字が問題となっているジュミアなどとは対照的だ。

同社が抱える一番の課題はアプリ改善のための費用をいかに賄うかだ。ジュマ氏は現在のシステムを作る前にアプリ開発を失敗し、現在はシステム稼働速度の向上に取り組んでいる。毎年200万シリングをシステムの改善と運営のために費やしており、よりよいシステム開発のために更に資金を投入したいとジュマ氏は説明する。

eコマース生き残りの新たな戦略

eコマース事業はアマゾンを代表するように、規模を一気に大きくすることで競合他社を排し、利益を拡大していく方法が多く取られてきた。しかし、マイビッグオーダーの事例はそうした規模拡大路線とはまた違った戦略をとっていることが分かる。売り手をパートナーと見立てて、コンサルティングや販促のサポートを行いながら、共に規模の拡大を図る方法は、まだオンラインショッピングが根付ききっていないアフリカでは有効な戦略となり得るだろう。

また、既に黒字化を達成しており、今後安定的なプラットフォーム運用が可能な点も見逃せない。マイビッグオーダーの戦略は長期的に見て、ジュミアやキリモールと異なる新たな道を切り開く可能性がある。今後も同社の動向に注目したい。


筆者: Lilian Museka

翻訳: 長谷川 将士

スタートアップ

Posted by HasegawaMasashi